「滝野智というキャラについて」

 半月のごぶさた。ちゃんと読むならあずまんが大王全4巻をご用意ください。

 滝野智といえばともちゃんこと元気とやる気だけは誰にも負けない暴走女子高生ですが、アニメ版ではそのキャラクター性が激しく誤解されて描かれている気がするので、漫画版における彼女についての考察をひとつ。

 彼女は元気で本能の赴くまま生きているわけではなく、その行動原理は「周囲の精神を揺さぶる、つまりネタになる行動を取る」ことに固執しています。わかりやすくいうと、「よみのメガネをずり落とさせること」を目的としているということです。(ぉ
 …失礼。つまり、「ある状況下に於いて、自分がどんな行動を取れば一番意外でおもしろいか」を常に考え、それを基にした行動を取ろうとするキャラということです。

 この「おもしろい」という意味は、一般的な「おもしろい」という意味とはちょっと違い、それを見た、受けた相手の精神が「揺れ」るか、よく言えば「心に残るか」どうかで、それが「おもしろい」かそうでないかを彼女は判断するのです。
 つまり彼女の行動、言動は基本的に「ネタ」でしかなく、作中、彼女の本心と言えるものはほとんどありません。そのネタのパターンは、

1.「この状況下でそれはないだろう」というネタ
2.「それやるか普通?」というネタ
3.「一見あってるように見えるけど間違ってるぞ」というネタ
4.「相手のネタ(振り)をネタで返す」というネタ
5.ツッコミ

 などになります。大きく分ければ、

1.仕込みネタ
2.返しネタ

 の2つに。「仕込みネタ」は自分から切り出すネタのことで、「返しネタ」は周りの状況から返しのネタを思いついて、すぐ実行するネタのことです。

「じゃ、パン買ってくる!」、「宿題忘れました!だから廊下に立ちます!」「今日から中間テストー!」「ラストスパート!」「グッドモーニング娘!!」などは仕込みネタで、あとはだいたい…返しネタかな…。

 そして彼女のネタの共通した狙いとして、「相手の精神を自分の手のひらで転がすこと」があると思います。「自分の思惑通りに周りの精神を動かし、相手のツッコミも含め、彼女にとって予想外なことがないままネタを終了させられる」ことが大いに重要です。仕込みネタにせよ返しネタにせよ、相手の行動、言動、心理を予測して、どうネタを構成するかが彼女の命題です。よって、彼女が絡みやすいのは「同様にネタ思考をする相手」、「ツッコミ役」、「普通の人」と、行動が予想しやすいタイプになり、逆に大阪のような「天然キャラ」は扱いにくい存在となります。(ボケ返してもツッコミは返ってこないし、ノっても発展しないし、つっこんだら自分がネタに絡まないまま、ネタの主導権を握れないまま終わってしまう)

 というわけで、彼女の周りの世界は、彼女にとって「どうネタにするか」の課題であふれた世界になります。

 周りに知り合いが居る中にあれば、彼女はその課題に基づき、彼女の行動、言動はすべて「ネタ」となります。

 そんな感じで、彼女は目立ちたいわけでも、誉めてもらいたいわけでも、笑わせたいわけでも、認めてもらいたいわけでもなく、ただ「ネタ」になることをしているだけなのです。

 勉強しないのは「勉強してもネタにならないから」(ネタになるときは勉強する)、オーバーアクションなのは「その方がネタに昇華できるから」、怒らせるような行動を取るのはそのまま「相手を怒らせ(精神を揺らし)たいから」です。

「二人称、敬称がころころ変わる」というのもまた彼女が「ネタ」で動いている証拠のひとつかと思います。つまりネタにふさわしい「キャラクター」を自分の中で作っているということです。

 ただ過ぎゆく人生はつまらんのです。笑ったり、泣いたり、怒ったり、喜んだり、悲しんだりして、人生に「スパイス」を効かしたいわけです。大きなお世話ながら、ともちゃんは周りにその「スパイス」を効かす役回りを進んでしてるわけですね。大きなお世話ながら、彼女は自分の人生を他人の人生のために使うことに命をかけているわけです。まぁ彼女自身そういう風に生きたいから生きているわけですけど。

 私は滝野智というキャラをそう考えます。

 というのも、私自身ともちゃん的生き方をしようと、彼女に出会う前からしていまして、「ネタ」や「ノリ」はかなり大事にしてます。「だってその方がおもしろいでしょ?」というのは自分の行動原理の最たる所になってます。

 彼女がそういうキャラだと気づき、感動したのは「ほら誰も手をあげなくて、教室がシーンとしてたらさ…、チャンスだ!って思うでしょ!?」というセリフを見てからです。まさに(成りきれなかった)自分の姿を見るようでした。

 彼女と違うのは「他人の迷惑になるネタをあまりしないこと」ぐらいで、あとはホント理想の姿って感じ。「キャラクター」であるがゆえ、「ネタがすべらない」のがなんとも羨ましいというか。実際にこういうネタ生活は「ネタにしきれない」ことや、「ネタに気づけない」こと、「ネタに失敗する」ことが多く、「もっとしっかりせな…」と思う毎日です。

 とりあえずアニメ版にはもっと頑張って欲しいです。